鉄器副葬品からみた古墳時代中期の一考察

NO 22


「宮垣外(みやがいと)遺跡」は「溝口の塚古墳」を中心とする墳墓群で、円墳2基・

方形周溝墓5基・円形周溝墓2基であるが、遺跡全体の墳墓数は5期〜7期を通じて

かなりの数にのぼり、各階層の墳墓が構築されている。土壙墓10から馬のほぼ全身骨が、

土壙墓64からは轡・鞍・鐙と馬具1式が副葬されていた。馬生産に直接関わった集団の墳

墓域であろう。「溝口の塚古墳」の被葬者は馬生産集団の長と考えられる。

隣接する「茶柄山古墳群」は総数10基の古墳群で、2基の前方後円墳と円墳群で構成され、

推定径23mの円墳「茶柄山9号墳」では周溝内より6基、墳丘裾部より1基、周溝から約

5m離れて1基、さらに径約20mの円墳である2号墳に近接して2基が確認された10基の

土壙から、其々馬1体分が埋葬されていた。

信濃・径30mの円墳と推定される「桜ケ丘古墳」の主室は破壊されていたが、其処から出

土したと思われるものに、鉄刀1・鉄剣4・鉄鉾1・鉄鏃・衝角付冑1・短甲1・頸鎧1

ある。川原石を用いた副室内からは金銅製天冠・竹櫛1・勾玉1・丸玉9・小玉35・臼玉5

鉄剣1が出土している。

上野・全長102mの前方後円墳「鶴山古墳」の後円部竪穴式石室の木棺内から、人骨と共

大刀1が上体側部に、5・斧5・?6以上、石製模造品の鎌3・斧2・刀子21が下肢部

に副葬されていたと推定される。木棺と石室側部間に2・大刀3、石室東端(頭部)部に

横矧板鋲留短甲2領とセットになった、留衝角付冑1・眉庇付冑1・頸甲と肩甲各1長方

形革綴短甲1が出土した。

上総・全長144mの前方後円墳「内裏塚古墳」の後円部に2基の竪穴式石室があり、東側

の甲石室から2体の人骨と鉄刀5・鉄剣2・小刀1・鉄鎌・角棒1・釿3・鉄鏃などが、西

側の乙石室からは鏡1鉄刀5・鉄剣1・鉄槍1・鳴鏑9・金銅製胡?1・釿2・鉄鏃などが

出土している。

播磨・長辺13m、短辺10mの方形を呈する「年ノ神6号墳」は、墓壙に木棺を内臓する。

副葬品は棺外と棺内に分けられ、棺外遺物は棺中央部の棺上に袋状鉄斧2・U字鋤先1

東側小口付近の棺上に?1・曲刃鎌1があり、棺名南西の側面には鉄剣1・鉄鏃57がある。

棺内遺物は、棺東半部に角板革綴短甲1・四獣鏡1・翡翠製勾玉1・ガラス製小玉多数・

竪櫛3がある他、形状不明ながら漆製品の痕跡が認められた。棺西半部には鉄刀2・鉄剣1

刀子1がある。角板革綴短甲は内部に頸甲・肩甲を入れている。

美作・「月の輪古墳」・径60mの円墳。主体部は2基の粘土槨(木棺)で、中央主体から

珠文鏡1・勾玉2・管玉16鉄刀3・鉄剣13・槍1・刀子4・鉄鏃2銅鏃3・横矧板革綴

短甲(頸甲・肩甲・草摺を含む1・?4・鑿4・小形鑿状工具4が出土し、南主体からは

?製内行花文鏡1・勾玉6・管玉32・棗玉3・滑石製小玉1048・ガラス製小玉31鉄刀4

鉄剣3・刀子1・鉄鏃1・石釧1・櫛8針状鉄器22以上・環状鉄器1が出土している。

築後・三重の周濠をめぐらす全長95mの前方後円墳「月の岡古墳」・主体部竪穴式石室の

長持形石棺から変形獣形鏡2・二神二獣鏡1・珠文鏡1眉庇付冑8・短甲8角板革綴・

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