鉄器副葬品からみた古墳時代中期の一考察

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三角板鋲留短甲1・三角板横矧板併用鋲留短甲1・頸甲・肩甲1領・?甲小札800余・

篠籠手小札・鉄刀23・鉄矛2・鉄鏃107・ホ具1・異形鉄製品・不明鉄製品が出土して

おり副葬品の大半が武器・武具で占められている。

 

河内で古市古墳群から外れた地域では、6期の径25mの円墳「堂山1号墳」の攪乱された

組合式箱形木棺内から、硬玉製勾玉3・碧玉製管玉10・ガラス製丸玉8・滑石製紡錘車1

が出土し、棺外両側より25本の短剣が出土した。

7期の径約22mの円墳或いは帆立貝形「高井田山古墳」の右片袖型横穴式石室の復元され

た東西2棺の組合式木棺の内、西棺からは金環・鉄刀片、東棺からは画像鏡1・青銅製熨斗

1・金環一対・ガラス玉(金層ガラス玉を含む頸飾り1連・手玉2連・足玉2連)・鉄刀1

刀子1が出土した。また棺外から甲冑(横矧板鋲留式衝角付冑・短甲、革綴頸甲・肩甲・

小札革綴草摺)1式・鉄槍・鉾20・鉄鏃160・木心鉄板張輪鐙・鎌・?・刀子・製塩

土器・土師器・須恵器(高杯・壷・脚付壷・器台)などが出土している。

 

百舌鳥・古市の二大古墳群の中間に独立的に築かれた、6期の全長114mの前方後円墳

「黒姫山古墳」の前方部竪穴式石室は副葬品埋納用と考えられるが、横矧板鋲留衝角付冑

8・形式不明衝角付冑3・小札鋲留眉庇付冑5・長方形小札鋲留眉庇付冑1・横矧板鋲留眉

庇付冑3・形式不明眉庇付冑4(冑合計24領)・横矧板鋲留短甲12・三角板鋲留短甲11

形式不明短甲1・三角板鋲留襟付短甲1・頸甲11・肩甲12・草摺4・鉄刀4・鉄剣・鉄鉾・

鉄製石突・鉄鏃・刀子などの多量の鉄製武器・武具が出土している。後円部の盗掘孔周辺

から滑石製紡錘車・衝角付冑片・杯を含む多数の須恵器が出土している。

大和・佐紀盾列・馬見・百舌鳥・古市の四大古墳群及びその周辺の古墳に“途轍もなく多

量な鉄器“が副葬される5期〜7期(特に6期)の間、他の地域においても多量な鉄器を

副葬した古墳が多く見られる。

 

3章 多量な鉄器を副葬する5期以降の古墳 (特記なき限り[ 4]より)

 

大和・河内・和泉以外の4〜5期の古墳では、摂津・径56mの円墳「豊中大塚古墳」

墳頂部の粘土槨の中に3基の割竹形木棺があり、第1主体部の木棺内からは硬玉製勾玉1

碧玉製勾玉5・同管玉35・ガラス製平玉40・同小玉193・滑石製算盤玉3鉄刀4・鉄鏃

27が、第2主体部東の木棺からは?製方格規矩獣文鏡1鉄刀10・鉄剣8・刀子3

三角板革綴衝角付冑2・三角板革綴衝襟付短甲2・長方板革綴短甲1・頸甲1・肩甲1

革製草摺1・櫛5が、棺外からは鉄槍3・革製盾2が、第2主体部西槨の木棺内からは、

鉄刀2・袋状漆製品1が、棺外からは鉄刀3・石製把付短剣1鉄鏃28・鉄斧10・鍬10

20・手鎌7・鑿11・?4・錐2・刀子15・革製盾2がそれぞれ出土している。

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